製作現場レポート ~フィニッシングブラシ~

ブートブラック フィニッシングブラシの発売から一月が経とうとしています。

大きな反響、高評価を頂き、嬉しい限りです。

本当にありがとうございます。

さて、そんなフィニッシングブラシについてブログを書くのも今回が最後。

製作の意図や製品コンセプト、使用法などは前回のブログで記しましたので、今回はブラシの実際の製作現場をレポートしたいと思います。


フィニッシングブラシは、どんな風に作られているのか。


すこし長くなりますが、最後までお付き合い下さい。


製作の現場である熊野町まで、広島空港から車で約40分。

山々に囲まれた筆の都に着きました。


製作に大きな機械を必要としない筆作りは、家内制手工業として江戸時代末期より町内で盛んに行なわれてきました。町内のいたるところに筆の工房が存在しています(一見、普通の民家にしか見えない工房もあります)。

脈々と受け継がれた技法と昔ながらの材料から生み出される書筆は、1975年に伝統的工芸品として通産省(現:経済産業省)から指定を受けました。

2004年に団体商標として、「熊野筆」を取得し、熊野町内で生産される書筆、画筆、化粧筆すべてに「熊野筆」とうたえるようになります。


熊野町には筆に携わる業者が約100社存在します。

内訳としては約7割が卸しで、生産能力があるメーカーは約3割です。更に、伝統工芸品としての書筆と化粧筆の両方を生産しているのは3社ほど。

今回、フィニッシングブラシの製作をお願いしたのは、その3社のうちの1社です。


フィニッシングブラシは、化粧筆の製法で作られていることは前回のブログでも説明しましたが、その製作には約30の工程(9割手作業)を必要とします。

まずは、筆作りにおいて最も重要な「選毛・毛の加工」の工程の紹介です。

良い筆には、良い原毛が必要になります。

工房には、原毛加工を目的として設立された海外工場から、選び抜かれた原毛が送られてきます。


原毛の状態では毛に過剰な油脂が含まれているので、まずは洗浄します。

書筆に使う毛は、油脂を限りなく落とす(油が墨付きを悪くする為)。

化粧筆も、どの工程で使うのかで洗浄の方法を変えています。

洗浄が終わった毛は、熱をかけ癖を取ると同時にストレートにします。ヘアーアイロンと同じ要領です。


洗浄されまっすぐに伸びた毛は、選毛の作業に回されます。

「さらえ」と呼ばれる工程。

毛先の欠けているもの、枝毛などの基準に達しないものを取り除いていきます。この工程で30%ほどが廃棄になるそうです。毛先は筆作りの命。こだわりに鳥肌が立ちました。

フィニッシングブラシは「山羊毛の産毛」と「馬の尾の先端の毛」を使用していますが、どちらも毛先がきれいに残っています。これは、さらえの工程のおかげです。

さらえの工程で選定された毛は、混毛の工程に移ります。

混毛は、簡単にいえば数種類の毛を混ぜ合わせる技法です。フィニッシングブラシは山羊毛と馬毛を1対1の割合で混ぜています。

混毛は、ブラシの出来に大きく影響する重要な工程。しっかり混ざり合っていないと、毛束にした際に部分的にコシが違う、柔らかさが違う等の不具合が発生します。

10種類前後の毛を混ぜて作る書筆の製作ノウハウが、ここで生かされます。


混毛の工程には専用の機械を使います。

ベルトコンベアーに山羊毛と馬毛を乗せて、10周以上、何度も重ねていきながら混ぜ合わせます。トランプのカードをきるイメージ。

きれいに混ざり合ったら、再度、洗浄して毛の加工は完了。


ここから一気にブラシの形になっていきます。

ブラシに使う毛量を計測し、束にします。(写真右)

写真左の型は、フィニッシングブラシ専用の型。この型に毛を詰めて毛束を作ります。

黄色の機械で振動を与え、束の毛先を揃えていきます。また、同時にここでも良くない毛先をピンセットで1本1本抜いていきます。切らないことがこだわりです。

きれいな束が完成しました。

この束を特殊な接着剤で根元を固めていきます。すると・・・

フィニッシングブラシの毛束の完成です。束の根元はしっかりと固定されており、毛の抜けが発生しにくい仕様にしています。

この束を4つ持ち手に埋め込んでいきます。

しっかりと接着剤で持ち手に固定していきます。

ブラシの形になりました。

最終検品の段階に入ります。

検品ルームは、ブラシの持ち手の微細なキズや、毛の質感をチェックするべく特殊なライトが設置されています。

仕上がったブラシを1本1本、手作業で検品していきます。


そして厳しい検品の目をクリアして・・完成です。

かなり端折っての説明になりましたが(本当はもっともっと細かい工程があります)、ここまでがフィニッシングブラシの製作工程です。

ひとつひとつの工程に意味があり、こだわりがありました。

仕上げ用ブラシとしては、最高のブラシが出来たのではないかと思っています。


さて場所は変わり、熊野町から車を走らせること約1時間半。

広島県府中市に到着しました。

府中市は日本国内でも有数の高級家具の産地。

フィニッシングブラシの持ち手はここで作られています。


府中市でも最大規模の設備と高い技術力のある家具メーカーに製作を依頼しました。

フィニッシングブラシの持ち手を作る際、素材は「日本」を感じてもらえるモノにしたいと思っていました。提案して頂いた素材は、広島の山々で育った檜(ひのき)。

軽く丈夫な素材は、ブラシの持ち手に最適でした。

きれいな木目を生かす為、余計なデザインや装飾は排除し、シンプルなロゴのみにしています。仕上げはオイル仕上げのみで、使い込んでいくことでエイジングも楽しんで頂けると思います。

檜の一枚板から削り出して作られます。

持ち手のサイズについては非常に悩みました。毛束のボリューム感を出そうと思うと、自然とサイズが大きくなります・・

発売したフィニッシングブラシの形状は、「毛束のボリューム」と「持ち手のサイズ」の最適なバランスを狙ったものです。指がかかる部分には窪みをつけたり、滑りにくいように工夫もしています。

広島県の素晴らしいメーカー様の力を借りて、フィニッシングブラシは完成しました。

12,000円(税別)とブラシとしては高額ですが、価格に見合うモノが出来たのではないかと思っています。

多くの方に愛用して頂ければ幸いです。

長文、最後まで読んで頂き、ありがとうございました。


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